「天気」の記事で学べる台風のトピックス

日本気象学会の機関誌「天気」の記事は WEBで誰でも読むことができます。 ここでは一般書よりも詳しく台風・熱帯低気圧の知識を得たい人向けに、 比較的に広い読者層が楽しめる「新用語解説」や「情報の広場」の コーナーで取り上げられた話題を紹介します。

サイクロン (Cyclone)

日本では一般にサイクロンは「インド洋や南太平洋に発生する 熱帯低気圧」を指す用語として用いられている。 しかしながら、英語のcycloneは低気圧一般を指す広い用語であるなど、 用語の使われ方には台風やハリケーンとは異なる複雑な事情がある。

詳細 (PDF)    黒岩宏司 (2011): 天気, 58巻, 77-82ページ

対流バースト (Convective Burst)

台風発生の数時間~数十時間前に対流活動が数回にわたり活発化する現象。 対流バーストに伴う風や温度変化が台風の発生に影響するとされる。

詳細 (PDF)    村田昭彦 (2015): 天気, 62巻, 459-460ページ

最大到達可能強度 (Maximum Potential Intensity)

台風には発達できる最大の強度が存在するという理論がある。 この理論では、台風が発達する環境場の海面水温だけではなく、 大気の温度なども考慮して台風の強度を評価する。

詳細 (PDF)    宮本佳明 (2014): 天気, 61巻, 799-801ページ

暖気核隔離の低気圧 (Warm-core Seclusion)

中緯度の温帯低気圧の中には、 台風のように暖気核を持ち強く発達する事例がある。 このような低気圧は「台風もどき」として話題になることもあるが、 台風とは構造やメカニズムが異なる点に注意が必要である。

詳細 (PDF)    北畠尚子 (2013): 天気, 60巻, 194-196ページ

ベータドリフト (Beta Drift)

台風は大規模な大気の風によって流されるだけではなく、 ベータドリフトというプロセスにより北半球では北西方向に進む傾向がある。 このプロセスは地球の自転の効果が緯度によって変化することより生じる。

詳細 (PDF)    山口宗彦 (2013): 天気, 60巻, 133-135ページ

PRE (Predecessor Rain Event)

大西洋の熱帯低気圧が中緯度に北上する際に、 その北側の1000kmほど離れた場所にレインバンドが発生・停滞する現象。 中緯度のシステムとの相互作用で生じ、豪雨を引き起こすことがある。

詳細 (PDF)    北畠尚子 (2012): 天気, 59巻, 171-172ページ

低気圧位相空間 (Cyclone Phase Space)

地球上には熱帯低気圧、温帯低気圧、亜熱帯低気圧など様々な低気圧が形成するが、 それらを客観的に分類する手法である。 分類では、低気圧の構造の対称性や上層・下層の暖気核・寒気核構造を評価している。

詳細 (PDF)    北畠尚子 (2011): 天気, 58巻, 801-803ページ

熱帯低気圧発生に関する指標 (Genesis Potential Index)

熱帯低気圧の発生に影響する環境場として、 高い海面水温や地球の自転の効果の他、 中層の湿度や鉛直シアなどが知られている。 これらの要素を組み合わせて、 台風の発生分布を評価するために作られた指標である。

詳細 (PDF)    村上裕之 (2011): 天気, 58巻, 78-80ページ

渦ロスビー波 (Vortex Rossby Wave)

台風の構造は完全な軸対称ではなく、 スパイラルバンドや多角形眼のような周方向に非軸対称性を持つ。 渦ロスビー波は非軸対称な構造が、 軸対称の流れによってどのように振舞うかを扱う理論の一つである。

詳細 (PDF)    板野稔久 (2010): 天気, 57巻, 513-516ページ

亜熱帯低気圧 (Subtropical Cyclone)

熱帯と温帯の中間に位置する亜熱帯で形成し、 台風と温帯低気圧の両方の性質を持つ低気圧。 台風よりも強風の範囲は広く、風や雲の分布は非対称である。

詳細 (PDF)    北畠尚子 (2010): 天気, 57巻, 342-344ページ

蒸発ー風速フィードバック (Wind-Induced Surface Heat Exchange; WISHE)

台風の発達などを説明する理論の一つ。 台風では中心付近の強風が海面からの蒸発を促進させ、 その水蒸気によって活発化する積雲対流活動が、 台風の循環をさらに強めるというフィードバックのメカニズム。

詳細 (PDF)    沼口敦 (1992): 天気, 39巻, 4ページ